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【レポート】アクセシビリティの祭典に参加してきました #accfes

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神戸にて丸一日かけてのアクセシビリティの勉強会、アクセシビリティの祭典に参加してきました。関西にこれだけのアクセシビリティクラスタの人が集まるのはそうそうありません。昨年開催にくらべて、1.5倍程度の人が集まっていたそうなので、運営側が大変だったようです。嬉しい悲鳴と言うべきか。。。規模もアクセシビリティへの認知も年を重ねる毎に増えているのは、とてもいい傾向です。これも、アイ・コラボレーション神戸の板垣さん(@itagakihero)を始め、熱量の高い方々が行動を起こしてくれているからこそ。そこになんとか別の形で答えていかなければと思わされた1日でした。

セッション1:神戸市のWeb担当者&関係者が語る公式ホームページの"真実"

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セッション1では、神戸市の取り組みが紹介されました。神戸市の取り組みは、他の県から問い合わせが来るくらい注目されています。トップページに検索窓を大胆に配置するUIは自治体サイトでは前例がありません(一時期話題になりましたね)。ただ、お話を聞いてると、綿密に調査した結果(ユーザーテストとアンケートの実施)、このスタイルになったそうなので、市民が求めているスタイルと合致しているということなのでしょう。

ちなみに、新潟県の長岡市。神戸市とほぼほぼUI一緒というw良いか悪いかは別として、神戸市の影響を受けてるのには間違いありません。

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あとは、何と言っても神戸市の中で運営体制が整っているということ。神戸市の職員さんを始め、外部のパートナーが一致団結して取り組む姿勢はなかなか真似することができないはず。チームを引っ張るリーダーが変わった時に、きちんとDNAが受け継がれるかどうかが、今後気になる所です。

セッション8のトークバトルでも言及されてましたが、サイト内の検索のことはわかるけど、外部からの検索で来る人に対しての施策というのはきちんとできているのか?というところ。確かに言われてみれば、気になります。検索エンジンで検索して、さらにサイト内検索をして、、、となると2度手間になってしまいますね。これで、本当にアクセシブルなのかと。本来であれば、目的のページまで最短でいけるのがユーザーのためなんじゃないかなと。そんな問題提起がありました。残念ながら、神戸市の担当者が帰られた後のセッションだったので、真意を聞くことができずに終わってしまいました。

関連サイト

セッション2:LIVEユーザビリティテスト

セッション2では、インフォアクシアの植木さん(@makoto_ueki)のライブユーザビリティテスト。実はこれが一番見たかったセッション。普段生活している中で、当事者の方がブラウジングをしている姿を見る機会なんてほぼ無いに等しい。ユーザビリティテストを行うには、実況してもらうことが必要で、「何をしましたか?」など質問やお話をしながら進めて行くスタイル(これを思考発話法というらしい)。被験者にとって、初めの雰囲気は大事で、リラックスして取り組む必要があります。そのあたりの持って行き方は、植木さんはうまいなぁと感じました。(慣れてるのもあるだろうけど)

視覚障害を持つ方は、スクリーンリーダーNetReaderを駆使して閲覧します。つまり、サイトの内容は、すべて音声で聞き取ります。文書構造がきちんとできてないと、サイトの内容を把握することが困難になるな、、、とユーザビリティテストを見て感じました。特に、ナビゲーション周りには気を使うべき!ページを回遊していると、ヘッダー部分をスキップできないのは見ててもツライなと感じましたし、ページ遷移の度に、同じ箇所(ヘッダー部分)を何度も読み上げられると、さすがにイライラしますね。

デモでは音声スピードを我々にも理解できるスピードで設定していただいていたようで、実際は一番早いスピードで聞いているようです。良く言われるのは、音声を聞いている途中に話しかけることはタブーということ。集中して聞いているので、邪魔をしてはいけないのです。その点、ユーザビリティテストって、横から話しかけるスタイルなんですが、大丈夫なんでしょうか?ふと、疑問になりました。見ている感じでは、ファシリテーターの腕によりそうな気もしました。

関連サイト

参考までに、総務省が出しているビデオをご覧いただければ、さらに雰囲気がつかめるはずです。何度も紹介しているのですが、改めて紹介させてください。

www.youtube.com

www.youtube.com

セッション3:マシンリーダブル=アクセシビリティ

セッション3では、マシンリーダブルのお話。人だけでなくて、ロボットやAIなどもブラウジングする時代です。音声認識のSiriなどに「今日の天気は?」と問いかけると、すぐさま答えが返ってきます。入力の形態が「音声」に変わっただけで、裏では検索をしています。なので、よりいっそう「マシンリーダブル」なつくりが必要なのです。

アクセシビリティは、障害者、お年寄りだけのものではありません。今後は、ロボットやAIがWebを使う側として参加してくるでしょう。がゆえに「マシンリーダブル」が重要になるのです。ロボットやAIが無視できない存在になることは間違いありません。

株式会社テレパシージャパンの関口さんが付けてた、スマートグラス。気になってましたが、話によると解像度がとても低いようです。(800x600くらい??)その中でのUIとなると、Webの世界で培ったものがあまり役に立たないというお話(まったく別物と考えたほうが良いとのこと)をされてました。サーバーと通信さえできれば、そもそもWebサイトを作る意味がなくなるかもしれないなぁと個人的には感じたのですが、そんな未来が果たして来るのでしょうか。音声認識やAI、ビッグデータが発展してくると、可能になるのかもしれませんね。

セッション4:あなたの価値を高めるWebアクセシビリティ

www.slideshare.net

セッション4では、ビジネス・アーキテクツの伊原さん(@magi1125)の講演。いつもながら、丁寧でわかりやすいセッションでした。書籍でも取り上げられている内容なので、詳しくは「デザイニングWebアクセシビリティ」をご覧いただければ理解が進みます。Kindle版なら安くていつでも見れるのでオススメです。

いつも言われていることですが、「アクセシビリティとは、アクセスできる度合い」と定義されています。まずは「アクセスできること」が重要です。つまり、アクセスできないと始まらない訳です。アクセシビリティは特別な対応と思われがちですが、当たり前のことを当たり前にできていれば、それなりにアクセシビリティに対応できているのです。(altを入れるなど)と考えると、実は「Webであるだけでアクセシブル」なんですね。紙媒体と違って、音声で読み上げもできますし。「Webの本質はアクセシビリティ」であるということを頭の片隅に置いておきましょう。

セッション5:私たち企業がアクセシビリティに取り組む理由

セッション5は、「私たち企業がアクセシビリティに取り組む理由」とうことで、スポンサー企業によるLT。いずれの企業も理念から始まってることには注目すべき点ですね。

サイバーエージェント

speakerdeck.com

サイバーエージェントの佐藤歩さん(@ahomu)のセッション。率先して取り組む姿は励まされる。社内でも横断的にアクセシビリティの意識が広まっているのは、とても素晴らしい取り組みだと感じました。ただ、一人では何もできないので、仲間を探さないとなぁと、つくづく思います。

サイボウズ

www.slideshare.net

サイボウズの小林さんのセッションでは、こんなお話がありました。

ユーザーは、「チーム」にアクセスしている。

この考え方を知った時、なんだか気が楽になりました。ごく当たり前のことが「アクセシビリティ」に繋がるんだなと。

ユーザーは、何にアクセスしようとしているのか

この問いかけで、小林さん自身の意識も変わったそうです。サイボウズで言うと、お客さまが求めているのは、チームにアクセスすることです。つまり、サイボウズにとってのアクセシビリティとは、「チームにアクセスできる能力」と定義されています。詳しくは、「アクセシビリティへの取り組み | サイボウズ株式会社」をご覧ください。会社ぐるみでの取り組みは、とても参考になりました。

Yahoo!

www.slideshare.net

Yahoo!の中野さん(@makojo)のお話。一番心に残ったのが「おじさんが多く、地味に見える」ということです。確かにおじさんが多く(自称大阪のアクセシビリティおじさん)、地味に見えます(汗)個人的には課題でもあり、いいところでもある(と思っていますが)。

FONTPLUS

http://fontplus.sakura.ne.jp/20170518/

関口さんのフォントのお話。最近は読み込みスピードも上っているとのこと。Webフォントも進化を続けているようですね。関口さんのサイトには、表示速度の検証映像も見ることができます。確かに、表示速度が早くなっているのが確認できます。FONTPLUSの導入は、月数千円からできるようです。個人サイトレベルであれば、導入コストもそんなにかからない印象。

Webフォントの良い所は、テキストなので、コピペができること。画像にしてしまうと、そのままコピペができないですからね。これ、意外と盲点でした。Webフォントを使う理由は、デザイン的要素だけではなく、コピペできるから。っていうのも理由になるんだと。そうすれば、altを入れる必要もないし、テキストをコピペできる。アクセシブルですね。

アルファサード

www.slideshare.net

じゅんなまさん(@junnama)こと、アルファサードの野田さんのセッション。印象的だったのは、「好きだからやっている」ということ。技術的好奇心が旺盛なようで、「世の中をテクノロジーで良くしていくのが楽しい」とのことでした。もう楽しいんでしょうねw

セッション6:WAI-ARIAの正しい使い方~あるある?ケーススタディ

www.slideshare.net

セッション6は、SAWADA STANDARD DESIGN の澤田さん(@SawadaStdDesign)と、D2Dのみるく(@milk54)さん、皿海さんのセッション。ちょっとした寸劇で楽しく拝見させていただきました。WAI-ARIAの使い方あるあるということで、よくある間違いなどを事例を交えて説明いただいたので、よく理解できました。途中で電話が鳴り退席してしまったので、最後まで見れなかったのが残念。。。

セッション7:話題の技術とアクセシビリティ(IoT、VR、AR、音声など)

セッション7は、セッション3の「マシンリーダブル=アクセシビリティ」と似たような内容かなと思ったんですが、持田さん(@motchie)の鋭い考察によって、とても内容の濃い時間となりました。持田さんのお話は、下記ブログにてまとめられているので、ぜひご覧ください。

セッション8:トークバトル60分一本勝負「アクセシビリティ vs IA/UX」

アクセシビリティの祭典の目玉企画とも言うべき、トークバトル。本家アクセシビリティおじさんこと、木達さん(@kazuhito)と、IA/UX Designeの坂本さん(@bookslope)の熱い戦い。UXがかっこいいのは「X(エックス)」という文字が入ってるからだそうです。確かに「X」はかっこよく見えるし、かっこよく聞こえる。。。

「アクセシビリティ」はWebの本質的なものなので、地味なのはしょうがないと思ってます。そこを含め啓蒙活動をしていく必要があると感じています。目先(見た目)にとらわれると、流行り廃りに左右される気がします。アクセシビリティは普遍的なものと捉えるのが良さそうです。

セッション9:グランドフィナーレ「アクセシビリティQ&A」

カッコいいアウトプットをすることが大事

アクセシビリティに関わってる人が、カッコいいアウトプットをすることが大事というお話が出てきました。これは、セッション8でのトークバトルの内容を受けてのものでしょう。確かに、かっこよさは必要かもしれない。しかし、どちらかというと、シンプルに伝わるものが必要だというのが個人的感想です。(自分でLTしてみて感じることでもあり、悩みでもある)もちろん、かっこいいにこしたことないですが。。。

伝える手段はあるけど、回りくどくなってしまったり、障害者や高齢者のためにある、的な内容になりがちだったり。伝える側も頭が凝り固まってしまってはいけないです(と、自分に言い聞かせている)。柔軟に対応できる術を持っておく必要があるなと思ってます。誰もが理解できる「未来」を見せることができれば、納得感が増すはず。。。セッション3での話は、僕自身ワクワクする内容だったし、そういう未来があるということをわかると、アクセシビリティってWebだけのものではないのだということが見えてくるはずです。

アクセシビリティを受託でやるには?

長谷川泰久さん(@yhassy)の「アクセシビリティを受託でやるには?」という質問が、印象に残りました。受託となると、だいたいの案件が作って、その後の運用を引き渡すことが多いですよね。となった時に「アクセシビリティ重要です」をどこまで運用チームに遺伝子として埋め込めるかが鍵となるわけです。木達さん曰く「経営層に、なぜ大事かを言っていかないといけない」とのこと。経営層に、どこまで理解を得れるかが大事で、そうじゃないと伝わっていかないと。どんどん、上の人達を巻き込んでいくことが必要なんですね。参考になりました。

まとめ

総じて言えるのは、「アクセシビリティはWebの本質である」ということです。ここ1年アクセシビリティを勉強してきて感じたこと。HTMLと同じで、20年経っても、大きく内容が変わりません。多様性は出てきていますが、本質は同じ。だから、僕自身、このWeb業界で生き残れてきたのだと自負しています。HTMLとアクセシビリティ。どちらも地味な分野ですが、Webには「アクセシビリティ」が欠かせないモノだと改めて実感できました。自分にできることは少ないにしろ、世の中の人達に少しでも意識してもらえる「キッカケづくり」ができれば。。。まずは社内からですね。

今後、さまざまなインターフェースが出てきて(音声認識や、VRなど)、アクセシビリティはWebにとどまらない世界となるでしょう。リアルとバーチャルの境目がなくなって、誰もが「シームレス」につながる世界へと進むはずです。この意味合いは大きいと思います。アクセシビリティの祭典に参加して、今のうちから取り組むべき分野だと確信しました。これは、コーディングだけの話ではありません。もっと広い視野を持って「アクセシビリティ」に取り組むことが必要ですね。

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以上。

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